セクシュアリティを理由にキャリアアップができない職場から抜け出すため、転職を決意しました。

セクシュアリティを理由にキャリアアップができない職場から抜け出すため、転職を決意しました。

O.Sさん(FTM/29歳)
学歴:高校中退
社数:正社員1社・アルバイト複数社
経験:家電製品の販売 ≫ アイスクリームの販売

転職成功のポイント
LGBTフレンドリー企業という転職活動の軸をより具体的にしたこと

カミングアウトをさせてもらえず、キャリアアップの道が閉ざされていました。

ー 転職をするまではどのようなお仕事をされていましたか?

高校時代に父親が亡くなり、母や妹のためにも稼がなければならなくなったことから、高校は中退しました。中退後は、飲食店やコンビニの夜勤、パチンコ店など、接客系のアルバイトをいろいろとやっていました。

26歳のときに家電量販店の販売スタッフとしてはじめて正社員での採用が決まり、3年間ほど働いていました。入社当時はすでにホルモン注射も始めていたので、パス度もそれなりに高かったと思います。身長も169cmあるので、女性と思われることはほとんどなく、入社時に店長にだけはカミングアウトをして、戸籍性は隠して働いていました。

ー 店長にはカムアウトされていたということですが、セクシュアリティ面の働きやすさはどうでしたか?

周りのスタッフは私のことを男性として認識していました。男性として働けることはとても嬉しかったですし、それなりに働きやすかったです。ここで長く続けていこうという気持ちでした。ただ、その会社でキャリアアップしていくには、店長からの推薦と転勤を伴う別の店舗への移動が必須でした。

唯一、カミングアウトした店長からは、『他の店長が理解があるかどうかはわからないし、会社として人事が何かしてくれる可能性は低いと思う』と言われていました。異動した先の店長にもカミングアウトして自分で説得をするということも提案しましたが、現場が混乱するだろうからという理由で、あまりよい顔はしてもらえず、なかなか推薦をもらえずにいました。

ー キャリアップするために転職活動に踏み切られたのですね。

はい。私には4年以上付き合っている彼女がいます。いつかは戸籍も変更して、結婚したいと思っています。将来、一緒に暮らしていくことを考えたとき、もうすぐ30歳になるのに、このままキャリアアップができなくていいのか、とても悩みました。月日が流れていくにつれて、本当に長く続けていけるのかどうか、この会社に勤めながらでも彼女と結婚して幸せな家庭を作っていけるのか、不安な気持ちがどんどん大きくなっていきました。やっぱり、30歳になる前に今後のキャリアを考えて転職をしようと決めました。

転職活動の目的を改めて整理したことで、転職活動の軸が定まりました。

ー 正社員としての転職活動は初めてでいらっしゃったかと思います。転職活動はどのように始められましたか?

LGBTフレンドリー企業で働きたいという想いで転職活動を始めました。具体的には、『LGBT 求人』『LGBT 転職』『LGBTフレンドリー企業』と調べて、検索にかかった求人サイトにいくつか登録をしました。あとは、『LGBTも歓迎』と書いてあった就活イベントなどにも行きました。

就活イベントはあまりいいなと思える会社がなく、1回しか参加しませんでした。基本的には、LGBT向けの求人サイトを経由して応募をしたり、ホームページにパートナーシップ制度に関する記載があったり、東京レインボープライドに出展していた会社の採用ページから応募していました。

ですが、なかなか書類選考は通りませんでした。なにも音沙汰がなかった会社も複数ありました。

ー LGBTフレンドリー企業を探されている中で、Nijiリクルーティング転職にも、登録をして頂いたんですね。

Nijiリクルーティング転職には求人に応募をし始めてから1か月ほど経った頃に登録をしました。ちょっとだけ後に登録した理由は、これまで転職エージェントを利用したことがなかったので、利用方法が少し不安だったからです。面談では何を聞かれるのだろうと思い、まずは自分でやってみようと思って、登録はしていませんでした。

ですが、なかなか上手く転職活動が進まなかったため、登録をしてみました。登録をした週にはキャリアアドバイザーの方との面談が決まりました。

ー 不安な気持ちもあったとのことですが、実際にキャリアアドバイザーと面談をしてみて頂いて、いかがでしたか?

キャリアアドバイザーの方との面談は1時間程度でした。これまでの仕事の経験や今後の希望、また現在、転職活動が上手く進んでいない状況などを一通り話しました。

話し終えた後、キャリアアドバイザーの方から『働きやすさのためには、制度も大切だけれど、風土もとても大切です。やみくもに受けても納得のいく転職活動にはなりにくいので、今回の転職の目的をもう一度整理して、希望が叶う転職活動をしていきましょう』と言われました。

私は、パートナー制度がある会社に行きたかったわけでも、東京レインボープライドに出展している企業に行きたかったわけでもありませんでした。FTMであることが障害にならず、キャリアアップしていける会社に行きたいと思っていたので、この言葉がとても印象に残りました。

ー 面談を終えて、転職活動の進め方に変化はありましたか?

LGBTに関する取り組みをしている企業の求人にやみくもに応募することはやめました。転職活動の軸はLGBTフレンドリー企業からキャリアアップに代わり、キャリアアップしていくために必要な要素として、FTMが障害にならないこと、という考え方に変わったと思います。

キャリアアップするうえでは、セクシュアリティに限らず、自分の強みが活かせることはとても大事です。職種はこれまでの経験が活かせる販売や接客業に絞りこみました。また、そもそもキャリアアップの仕組みがない会社では意味がないので、求人毎にキャリアアドバイザーの方からキャリアパスの説明をしてもらいました。キャリアアップしていくためには、その会社に長く勤めていくことも大切だと考え、セクシュアリティへの理解を含めた会社の雰囲気や社風なども重視して、求人を探してもらいました。

カミングアウトした際の反応は、少し拍子抜けしてしまうくらい、とても普通でした。

ー 今の職場への転職を決意した決め手について教えてください。

最終的に内定は2社もらいました。1社はスマートフォンの販売を行う会社で、もう1社はアイスクリームの販売を行っている現在の職場です。2社とも転職活動の軸であったキャリアアップの仕組みは明確で、社風も自分にあっていると感じ、長く働いていくイメージを持つことができました。初任給は前職よりも少し低かったのですが、社長の言葉が決め手で、入社を決意しました。

社長から最終面接で言われたのは、『カミングアウトをするのもしないのも本人の自由』『LGBTの方向けの特別な制度を作ることは現時点では考えていない』『LGBTだからという差別もしない』『LGBTと一括りで考えずにお互いの信頼関係の中で困ったことがあれば解決していきたい』『困ったことがあればいつでも相談してほしい』などです。

制度やルールで決めるのではなく、困ったことがあれば人と人との関わりの中でお互いを思いやって解決していきたいという姿勢をとても感じました。セクシュアリティに限らず、長く働いていれば自分一人では解決できないことが誰しもでてくると思います。そう考えたときに、この価値観の社長のもとで働いていきたいと思いました。

ー 価値観が決め手になったんですね。実際、職場へはカミングアウトはされたんですか?

社長の言葉をふまえて、職場へは自分のタイミングで自分自身でカミングアウトをしていきました。すでに店長として働いているFTMの社員がいたこともあり、カミングアウトしたときの相手の反応はとても普通でした。根掘り葉掘り聞かれることも一切なかったですし、変に遠慮されることもなかったです。

職場にはアルバイトやパートの社員も沢山いて、よくシフトが被る子たちにもカミングアウトしていきましたが、本当に普通でした。若い人が多いというのも関係するのかもしれませんが、『そうなんですね!男性にしか見えませんでした!』『同じクラスにも性別は女性なんですけど、男の子の恰好してる子いますよ』みたいな感じで、想像以上にフランクで、少し拍子抜けでした。

FTMであることを隠さずに働けているので、仕事に集中しやすいです。

ー FTMというセクシュアリティがごく当たり前に浸透している職場なんですね。

今思うと、前職では確かに男性として勤務できていて働きやすい面もありましたが、日々の会話などでバレないようにセクシュアリティを常に気にしながら仕事をしていた気がします。今の職場では、ひとりひとりFTMに対する知識こそばらつきはありますが、嫌な顔をする人はひとりもおらず、みんなとても自然体でフレンドリーなので、隠さなきゃいけないというプレッシャーがなく、仕事に集中できていると感じます。

ー 転職活動の軸であったキャリアアップはしていけそうですか?

入社後、社長とは定期的に面談をしていますが、とてもよく見てくれていると感じます。『自分から声をかけて仲間を作っていける性格はとても強みだから、そこを活かしてみんなを引っ張っていく存在になってほしい』と言っていただけたときは、とても嬉しかったです。

逆に足りないところも指摘してもらっています。忙しくなると態度にでてしまうところがあるので、もっと冷静な判断ができるようになることが今の一番の課題です。社長はもともと現場の経験がある人なので、忙しい時の現場を理解してアドバイスをもらえるのは、とてもありがたいと思います。

ー 最後に今後の目標について教えてください。

半年後に店長になることが今の目標です。現場では店長からマネジメントや売上管理などの業務を学んでいます。また、本社で行っている店長へキャリアアップするための研修にも参加しています。店長試験の合格を目指して、頑張りたいと思います。

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